壁を這うやつ(2015)

HMDをかぶって壁を登る体験をする作品です。垂直な壁を登るのに体制は水平仰向けです。IVRC界隈では有名なテクニックで、人間はふんわりと水平に置かれるとどちらが上なのかといった重力感覚が非常に曖昧になります。その曖昧になった感覚に画像などの刺激を与えると比較的自由に上下左右の方向感覚を与える事ができます。そして、衝撃を与えることで落下感を与えます。

水平吊りすることで、重力感覚を鈍らせる手法の伝統は古くバーチャルバンジージャンプ(1991)まで遡ります。しかし当時はハーネス着用で体験準備にかなりの時間が掛かっていましたが、この頃に出てきたハンモックを用いる手法で劇的に体験準備時間が減りました。

本作品では壁を登る感覚を提示するのに、仰向けになっているのが特徴的です。通常は上のバンジージャンプやBe Bait!(2018)のようにうつ伏せになるのが多いです。個人的な感覚ですが、壁を登る際の腕に力が必要な感じを感じるにはうつ伏せのほうがよかったと感じました。

普段間違うはずのないと思っている重力による上下感覚は、こんな風に意外に簡単に曖昧にする事が出来てしまいます。まだまだ色んな表現の可能性がある部分と言えるでしょう。