過去のIVRC作品をピックアップして、独断で解説します。今回はVibroSkate(ビブロスケート)。
スケボーの体験ができる作品です。全面と床面にスクリーンがあって、スケボーからはタイヤが転がる時の振動が伝わってきます。地面を蹴るための床は回転ベルトになっていて、自然に地面を蹴って前に進む事ができます。この回転ベルトの床は蹴った力を測るセンサもはいっていて、蹴る力に併せて加速する事ができます。 機能だけをみると単純ですが、VibroSkateでは実際に蹴った速度よりもスピードを上げるという電動アシスト自転車的な機能がついています
近年では手軽さからHMDを利用する事が多いですが、運動を伴うコンテンツを安心して行うにはこのようなプロジェクタ方式のほうが有利です。スケボーの振動による足裏触覚による移動感の提示はIVRCの伝統芸ともいえる文化で、同年のスノーキン(2014)、や海へ(2009)等もあります。
そして私が特に秀逸だと思うのはベルトを蹴る部分です。蹴った力や速度以上に速度感を提示しているのに、自然に操作できます。矛盾した情報を入力するので、気持ちよく動かすのは普通は難しいです。ビブロスケートでは言葉で言えば「力をためている」という感覚でごく自然に加速感が出ていました。
足裏振動と映像で 単純に現実を再現するだけじゃなく、ちょっとだけ速度を上げて爽快感を出してあげる。こういった「自然な」アシストは近年流行っているパワーアシストスーツや運転補助にも生きてくる技術だし、なんといっても自分が強く・速くなるのは気持ちいいですよね。
逆に近年では「けん玉できた!VR」のように人間を強くするのではなく、環境を人間に優しくする事で、運動を楽しむVRもあるので、色んな視点で世界や人間をアシストするのは楽しそうです。